平均律 1999年 181x259cm

 

オリーブの木 列を乱して 並んでいる
車を停め スケッチブックの 紐をとく

大小 たくさんの 木に たくさんの 細長い葉
長い時間の果てに 描いたのは 一本のオリーブの木
絵描きに たくさんは要らない

一年後 再びオリーブの木々に出会う たくさんの
絵を描いていると 白髪の老人が現れて 話しかける

『オリーブの木は 皆に たくさんの 恵みを与え 教師であった私も
子どもたちに たくさんの 学びを与えた
オリーブの枝の先で躍る葉
私の頭の白髪 どちらも神様の祝福のしるし』


オリーブの葉が風で翻り 誇らしげな白い頭が見えた
老人の言葉が 一枚の絵を仕上げた 絵を描くのに大切なのは
目ではなく 人や植物の話を聴く 耳である

宮廻正明

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